トルコでの会社設立は、外国人でも100%出資の有限会社(Limited Şirket)を最低資本金50,000 TRY(2024年改正、約18万〜20万円)で、書類が揃えば1〜2週間で登記できます。設立費用は公証・登記・会計士費用で15万〜35万円、年間の維持費(会計士・税・社会保険)は最低でも60万〜120万円が目安です。
設立自体は簡単ですが、本当の壁は「銀行口座開設」「自分の就労許可(トルコ人5人雇用要件)」「毎月の会計・税務」にあります。このページでは、法人形態の選び方、手順と書類、費用と期間、税制、就労許可と滞在許可、口座開設の現実、維持費、日本人に向くビジネスと向かないビジネスを、実際に立ち上げを手伝ってきた立場からまとめます。法務・税務の最終判断は現地の弁護士・会計士にご相談ください。
法人形態——Ltd. Şti. と A.Ş. の違い
| 有限会社(Limited Şirket / Ltd. Şti.) | 株式会社(Anonim Şirket / A.Ş.) | |
|---|---|---|
| 最低資本金 | 50,000 TRY | 250,000 TRY(非公開) |
| 株主数 | 1〜50人 | 1人〜 |
| 外国人100%出資 | 可 | 可 |
| 株主の責任 | 出資額まで(ただし公的債務=税・社会保険は株主も個人責任) | 出資額まで(公的債務は取締役が責任) |
| 株式譲渡 | 公証人+登記が必要、譲渡益課税 | 株券の裏書で可能、2年保有で譲渡益非課税 |
| 向く | 小規模事業、1人会社、サービス業 | 将来の売却・投資家受け入れ、不動産保有 |
| 設立費用 | やや安い | やや高い(資本金も大きい) |
- 日本人の小規模事業(輸入代行、ツアー、コンサル、飲食)はLtd. Şti.が標準。
- 支店・駐在員事務所:日本法人の支店(営業可、本社が責任)、駐在員事務所(営業不可、情報収集のみ、産業技術省の許可)もある。
- 個人事業(Şahıs Şirketi):外国人も可能だが、就労許可が必要で、責任が無限。あまり使われない。
設立の手順と必要書類
- 納税者番号(vergi numarası)の取得:パスポートで税務署またはオンラインで即日。
- 定款(ana sözleşme)の作成:MERSIS(中央登記システム)で会計士・弁護士が作成。事業目的(NACEコード)、資本金、株主、取締役(müdür)を記載。
- 公証:署名見本(imza beyannamesi)を商業登記所または公証人で。本人の渡航が必要(委任状で代行も可:日本の公証役場+アポスティーユ+トルコ語翻訳)。
- 商業登記所(Ticaret Sicil Müdürlüğü)で登記:競争庁への拠出金(資本金の0.04%)、登記費用の支払い。登記完了で法人格取得。
- 税務署の開業確認:税務官の事務所訪問(yoklama)。実在する事務所住所が必要(バーチャルオフィスは可だが審査が厳しくなっている)。
- 会計帳簿の認証、電子署名(e-imza)、電子請求書(e-fatura)の登録。
- 社会保険(SGK)登録:従業員を雇う場合。
- 銀行口座開設と資本金払込:Ltd.は登記後24か月以内に払込で可(A.Ş.は登記前に25%)。
外国人株主が用意する書類
- パスポートの公証翻訳(トルコ語)
- 納税者番号
- 住所証明(トルコ国内の住所。ホテルは不可の場合あり)
- 日本法人が株主の場合:登記簿謄本・定款のアポスティーユ付き翻訳、取締役会決議
- 証明写真
費用と期間(2026年・目安)
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 最低資本金(Ltd.) | 50,000 TRY(約18万〜20万円)※会社の資金として使える |
| 登記・公証・競争庁拠出金・帳簿認証 | 3万〜6万円 |
| 翻訳・公証(パスポート等) | 1万〜3万円 |
| 会計士・弁護士の設立手数料 | 8万〜25万円 |
| 事務所住所(バーチャル/シェアオフィス、年間) | 5万〜20万円 |
| 電子署名・e-fatura | 1万〜2万円 |
| 設立時の合計(資本金除く) | 15万〜35万円 |
- 期間:書類が揃えば登記まで3〜10営業日。日本からの書類準備(アポスティーユ・翻訳)に2〜4週間。
- 本人の渡航:署名見本と銀行口座開設で最低1回(3〜5日)。
税制の概要(2026年)
| 税 | 税率 | メモ |
|---|---|---|
| 法人税 | 25% | 輸出所得は5ポイント軽減の制度あり |
| 配当源泉税 | 15%(日本居住者は日土租税条約で軽減の可能性) | 日本側で外国税額控除 |
| 付加価値税(KDV) | 標準20%、軽減10%・1% | 毎月申告 |
| 源泉税(給与) | 15〜40%の累進 | 毎月 |
| 社会保険(SGK) | 給与の約37.5%(雇用者+被用者合計) | 最低賃金ベースでも1人月約1万〜1.5万円の雇用者負担 |
| 印紙税 | 契約額の0.189〜0.948% | 契約書・給与明細に |
| インフレ会計 | 2024年〜適用 | 会計士の負担増 |
- 申告頻度:KDV・源泉税は毎月、法人税は年1回+四半期の仮払い。会計士なしでは実務上不可能。
- 日本との二重課税:日土租税条約があり、配当・利子・使用料の源泉税が軽減される。日本の税理士とトルコの会計士の両方に相談を。
自分の就労許可と滞在許可——最大の壁
- 会社を作っても、自分が会社で働く(給与を受け取る・経営する)には就労許可(çalışma izni)が必要です。株主として配当を受けるだけなら不要。
- 就労許可の要件(2026年):①払込資本金10万TRY以上または売上80万TRY以上または輸出25万USD以上、②外国人1人につきトルコ人5人を雇用(設立後6か月は猶予)、③外国人が20%以上の株主で、資本の4万TRY以上を保有。
- 現実:トルコ人5人雇用は、最低賃金ベースでも月60万〜80万円の人件費。小規模事業には重く、多くの日本人は「株主として配当」+「別ルートの滞在許可(不動産20万USD等)」を組み合わせています。
- 就労許可が取れると:就労許可=滞在許可を兼ねる。家族の滞在許可も申請可。
- 例外:トルコ人配偶者がいる場合は要件が緩和。ターコイズカード(高度人材)は別枠。
銀行口座開設の現実
- 個人口座:外国人は納税者番号+パスポート+トルコの住所証明(または滞在許可)で開設可だが、2023年以降、滞在許可なしの外国人への口座開設を渋る銀行が増えた。開設できる銀行・支店は変わるため、現地で最新情報を。
- 法人口座:登記後、取締役が本人出頭。資本金の払込証明と事業内容の説明を求められる。マネロン対策で、事業実態(事務所・契約・顧客)の確認が厳しくなっている。
- 国際送金:日本からトルコの法人口座への送金は可能だが、資金の出所説明を求められる。トルコから日本への送金は、法人の場合は配当・支払いの根拠書類が必要。
- 対策:会計士に「口座開設に協力的な支店」を紹介してもらう。事業計画書を用意。最初の訪問は会計士同行で。
年間維持費と会計(1人会社の最低ライン)
| 項目 | 年間目安 |
|---|---|
| 会計士(毎月の申告・記帳・年次決算) | 25万〜60万円 |
| 事務所住所 | 5万〜20万円 |
| 取締役の社会保険(4/b・Bağ-Kur) | 約10万〜15万円(就労許可なしの外国人取締役は加入不要の場合あり) |
| 商工会議所の年会費 | 1万〜3万円 |
| e-fatura・電子署名・ソフト | 2万〜4万円 |
| 法定の最低限の税(売上ゼロでも) | 数万円 |
| 合計(売上ゼロでも) | 45万〜100万円 |
- トルコ人を1人雇うと+年120万〜200万円(最低賃金+社会保険)。
- 休眠にしても維持費はかかる。使わない会社は清算(6か月〜1年、10万〜30万円)する方が安い。
日本人に向くビジネス・向かないビジネス
向く(実例が多い)
- 輸入代行・貿易:トルコ雑貨・食品・繊維・オリーブオイルの日本向け輸出。現地法人があると仕入れ・VAT還付・輸出書類が楽。→ 輸入ビジネスガイド、オリーブオイル
- ツアー・コーディネート:日本人向け観光・医療付き添い・不動産内見。TÜRSAB(旅行業協会)登録が必要な業務に注意。
- 日本食・カフェ:イスタンブールの日本食需要は増加中。ただし飲食は人件費・家賃・許認可(衛生・酒類)のハードルが高い。
- IT・コンサル・オンライン事業:顧客が日本なら、トルコ法人は「住む理由」として機能。
- 不動産保有会社:複数物件の保有・賃貸をA.Ş.で。
向かない・注意
- 「会社を作れば滞在許可が取れる」目的だけの設立:就労許可の5人雇用要件で頓挫する。
- トルコ国内市場向けの小売・サービス:言語・商習慣・インフレの壁。現地パートナーなしは難しい。
- 規制業種(医療、教育、金融、酒類製造):外国人の参入制限や許認可が複雑。
よくある質問
外国人でもトルコで会社を設立できますか?+
はい。日本人でも100%出資の有限会社(Ltd. Şti.)を最低資本金50,000 TRY(約18万〜20万円)で設立できます。書類が揃えば登記まで3〜10営業日です。
設立費用はいくらですか?+
資本金を除き、登記・公証・翻訳・会計士手数料・事務所住所で15万〜35万円が目安です。年間の維持費は売上ゼロでも45万〜100万円かかります。
会社を作れば滞在許可は取れますか?+
会社設立だけでは取れません。自分が働くには就労許可が必要で、外国人1人につきトルコ人5人の雇用(設立後6か月は猶予)と資本金・売上の要件があります。多くの日本人は株主として配当を受け、不動産20万USDなど別ルートの滞在許可と組み合わせています。
法人税はいくらですか?+
25%です。輸出所得は5ポイント軽減の制度があり、配当の源泉税15%は日土租税条約で軽減される可能性があります。KDV(付加価値税)は標準20%で毎月申告です。
銀行口座は開設できますか?+
可能ですが、2023年以降マネロン対策で厳しくなり、滞在許可のない外国人や事業実態の薄い法人は断られることがあります。会計士に協力的な支店を紹介してもらい、事業計画書を用意して本人が出頭するのが現実的です。
どんなビジネスが向いていますか?+
輸入代行・貿易、日本人向けツアー・コーディネート、日本が顧客のIT・コンサル、不動産保有会社などです。トルコ国内市場向けの小売やサービスは言語・商習慣・インフレの壁が高く、現地パートナーなしでは難しいです。
関連記事
トルコ移住の条件・ビザ・デメリット 必要資金と仕事の現実 2026
移住ルート5つ(不動産20万ドル・就労・学生・婚姻・ロングステイ)、滞在許可の取り方、生活費、仕事の現実、医療・教育、都市比較、後悔するパターン、移住までのステップ。
記事を読む →
トルコの滞在許可(イカメット)の取り方 2026 不動産20万ドル・種類・書類・費用・閉鎖地区
観光滞在許可が出なくなった今の現実的ルート。不動産ルートの条件、閉鎖地区の落とし穴、必要書類、手順と期間、費用、更新・永住権・市民権への道筋。
記事を読む →
トルコ ロングステイガイド ビザなし90日で1〜3か月暮らす:都市・家・費用・通信・医療
イスタンブール月25万〜40万円、アンタルヤ・イズミル18万〜30万円。4都市比較、家具付き賃貸の探し方と相場、通信・銀行・医療のセットアップ、リモートワーク環境、シニアの冬越し、90日ルール。
記事を読む →
トルコ雑貨・食品の輸入ビジネス入門 売れ筋・仕入れ先・関税・送料・はじめ方
ランプ・キリム・陶器・ペシュテマル・オリーブオイルの仕入れ値と日本の販売価格、工房・問屋街の使い分け、品目別の関税と食品衛生法・薬機法、送料比較、ハンドキャリーから小口輸入へのステップ。
記事を読む →
トルコ産オリーブオイルの選び方 なぜ安い・本物の条件・おすすめブランド・持ち帰り
世界上位の生産国トルコのエーゲ海産早摘みオイルがイタリア産の1/2〜1/3で買える理由、産地別の特徴、ラベルの読み方5条件、スーパーで買える定番とプレミアム、持ち帰りと保存。
記事を読む →
トルコ不動産完全ガイド 2026 価格相場・市民権40万ドル・滞在許可20万ドル・購入手続き
イスタンブール平均1,755ドル/㎡、名目+28%・実質横ばいの読み方、目的別の物件選び、エリア別相場、市民権と滞在許可の条件、TAPUまでの手続き、諸費用7〜10%、詐欺の手口。
記事を読む →
トルコ生活費・家賃相場ガイド2026 イスタンブール・アンタルヤ・イズミルを日本円で
単身18万〜28万円、夫婦25万〜40万円、家族45万〜80万円。都市・地区別の家賃、費目別内訳、インフレの実態、学校・医療費、節約の知恵。
記事を読む →
トルコ市民権(投資プログラム)2026 不動産40万ドルの条件・手順・費用・日本人の二重国籍問題
鑑定評価額40万ドルの不動産を3年保有で6〜12か月で取得、配偶者と18歳未満の子も同時、居住要件なし。日本の国籍法では外国籍取得で日本国籍を喪失するという最大論点、不動産ルートの詳細条件、申請手順、諸費用2.5万〜4万ドル、失敗パターン。
記事を読む →
トルコのビザ 日本人は観光90日不要・180日ルール・残存期間・90日超の滞在許可 2026
180日のうち90日までビザ不要、残存150日以上(6か月推奨)。180日ルールの計算例、入国審査、観光目的の滞在許可が出なくなった後の現実的ルート、就労・学生・家族、オーバーステイの罰則。
記事を読む →
トルコ不動産の購入手続き完全ガイド 内見からTAPU登記まで・税金・弁護士・トラブル事例
納税番号・銀行口座・弁護士のデューデリジェンス・鑑定・売買契約・外貨購入証明・登記当日の公認通訳・登記後の手続きを時系列で。諸費用7〜10%、実際にあったトラブルと防ぎ方。
記事を読む →